トップ > イタリア > イタリアの注目生産者 > ペトローロ

ペトローロ

Petrolo

ブドウ栽培を運命づけられた土地


歴史的にも重要な位置づけにあるトスカーナ州。

中世からフィレンツェの実力者であり、後にトスカーナ大公となったメディチ家は、トスカーナの土地の中でも選り抜きの場所には「ブドウ栽培をすべし」というお墨付きを与えています。1716年、トスカーナ大公コジモ三世は、トスカーナの4つの地について「特に貴重なブドウの栽培地」という法令を発布しました。その4つとは、

@パンツァーノとグレーベに位置するキャンティ・チェントロ
Aフィレンツェの西側にあるカルミニャーノ
Bフィレンツェの東側にあるポミーノ
Cヴァルダルノ・ディ・ソープラ(現在「ペトローロ」が所有する土地)

なのです。

19世紀に、ヴァルダルノ・ディ・ソープラの土壌が特にサンジョヴェーゼの栽培に向いていることが確認されています。

1940年代、このブドウ畑はバッツォッキ家が購入します。バッツォッキ家の人々は、ブドウ畑の伝統と歴史を重んじ、ブドウ栽培に献身してきました。

広いトスカーナ州の中でも、とくにブドウ栽培に向いているとされたペトローロの土地は、森とオリーブ畑とブドウの木の共存によって、唯一無二の土壌を生み出しました。そしてその土壌が、さまざまなブドウの種の栽培をさらに促進するという小宇宙を作っているのです。

バッツォッキ家の4世代が継承してきたペトローロ


バッツォッキ・サンジュスト家が4代にわたって継承してきたワイナリー「ペトローロ」は、標高250メートルから450メートルに位置するキャンティの丘に272ヘクタールの土地を所有しています。そのうち、ブドウ畑となっているのは30ヘクタールほど。

キャンティ・クラッシコ地方の南東に位置するヴァルダルノ・スーペリオーレに広がるペトローロのブドウ畑は、ガレストロと呼ばれるアペニン山脈周辺の結晶片岩を含む粘土と砂の土壌が特徴です。

80年代半ばから、この土壌に適合したブドウだけを栽培するというワイナリーの方針が固まり、現在栽培されているのはサンジョヴェーゼ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、トレッビアーノに限られています。一本のブドウの木から生産されるブドウの量を抑え、自然の力を最大限に利用する、これがペトローロの哲学になっています。

1950年代、1ヘクタールには1500本のブドウが植えられ35万リットルのワインが醸造されていましたが、現在はワイナリーの哲学に従って1ヘクタールあたりのワイン生産量はわずかに7万リットル。この効果は、ワインの品質に如実に現れています。ブドウの栽培からサインの醸造にいたるまで、あらゆる工程において緊張感を保つことがペトローロのワインの質を支えているのです。

近年、ペトローロは高品質で高額のワインの製造のみに焦点を絞りました。それは、ワインのラベルがワイナリーのアイデンティティーであることを自覚し、ワイナリーの顔となる商品のみを作るという強い意志にほかなりません。

ペトローロのクリュ


ペトローロのブドウ畑の総面積は31ヘクタール、1ヘクタールあたりに5500本のブドウが栽培されています。

それぞれのクリュの特徴は、以下のようになります。

サン・マルコ

1ヘクタール強のこのクリュには、サンジョヴェーゼが栽培されます。標高300メートル、南東向きの土地から収穫されるブドウは、「トッリオーネ」の原料となります。1990年代半ばに、ブドウの木の一部が植え替えられました。

ガラトローナ

粘土質が強い土壌のクリュで面積は3ヘクタール。1990年に植えられたメルローのクリュです。その名の通り、「ガラトーナ」のワインとなるブドウの畑です。

フェリアーレ

1990年に植えられたブドウで占められる「フェリアーレ」のクリュは5ヘクタール。土壌は完全にメルロー向きですが、近年実験的にカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プチ・ヴェルドも栽培されています。収穫されたブドウは、「ガラトローナ」のワインとなります。

レチェッタ

ペトローロの所有するクリュでは最も古く、60年以上の歴史があります。フィロキセラが欧州のブドウ畑を席巻する前から健在のクリュです。現在は、サンジョヴェーゼが栽培されており、「トッリオーネ」の原料となっています。

アジロ

2ヘクタールほどのクリュで、植えられているのはサンジョヴェーゼ。こちらも「トッリオーネ」の原料となります。

メレターナ

1ヘクタールほどのクリュにはメルローが栽培されています。森に囲まれた独特の地形から生まれるブドウは唯一無二の味わいです。

カザリッチョ

3ヘクタールの土地にサンジョヴェーゼが栽培されています。ブドウは「トッリオーネ」の原料となります。

カンパッチョ

ペトローロが所有する広大な土地の中でもとくに美しい風景を有しているクリュです。森に囲まれた1ヘクタールの畑には「トッリオーネ」のためのサンジョヴェーゼが栽培されています。

ピアナッチ

アレッツォの街とミラノ大学農学部とのコラボで実験的にサンジョヴェーゼが植えられている畑です。

ボッジナ

1947年にガストーネ・ボッツォッキによって植樹された最も歴史あるクリュです。ワイナリーを支える中心的なブドウ畑は、看板商品の「トッリオーネ」のワインの原料が収穫されていました。2006年からクリュの名前をとった「ボッジナ」の生産も始まりました。

ドットーレ

2ヘクタールのブドウ畑に植えられているのはメルロー。「トッリオーネ」のワインのために使用されます。

ラーゴ

2ヘクタール半の新しいブドウ畑では、メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンが栽培されています。

恵まれた気候条件プラス綿密な手作業


ペトローロがあるキャンティ地方は、特にブドウ栽培には適した気候で知られています。

さらに、トスカーナ大公のお墨付きまである豊かな土壌により、非常に恵まれた条件でブドウ栽培ができることはワイナリーの僥倖といってよいでしょう。

それに加え、冬期の伐採、ブドウ園の徹底した管理が行き届き、収穫の時期には昔ながらの木の箱を使用した手作業が継承されています。ブドウの粒の選別も、すべて人間の手を経て行われています。

熟成は、ブドウの品種に応じてフランスのバリック、トノー、4000リットルのフランス製の大樽が使い分けられています。

ペトローロのワイン


ヴァルダルノ・ディ・ソープラ・ロッサ・トッリオーネ

ペトローロの顔ともいうべき「トッリオーネ」。サンジョヴェーゼ80%、メルロー15%、カベルネ・ソーヴィニヨン5%の配合で生産されます。1988年から生産されている「トッリオーネ」は、代々のワイナリーの運営者が重ねてきた経験の賜物と呼ばれています。

15ヶ月間、フランス製のオーク樽で熟成されることで深みのある味わいと安定感のある美しい赤色を生み出します。トスカーナの地のアイデンティティーともいうべき名ワインです。

その香りは非常に毅然としており、シャクヤク、バラ、キナノキ、バニラが甘く鼻腔を満たします。温かく包み込まれるような味わいが特徴で、後味にはスパイス感が漂います。

豚肉の料理と最高のマリアージュを楽しめるワインです。