メルキュレイ

Mercurey

メルキュレイはブルゴーニュ地方コート・ドール地区の南に続く東西4〜6km南北約40kmの丘陵地帯コート・シャロネーズ地区の村名A.O.C.。同地区で最も生産量が多く、代表格の存在です。

メルキュレイ村は、かつて商い・旅行の神様、Mercurey(英語読みマーキュリー)を讃えた神殿が建てられていたことからこの名が付けられました。古代ローマ帝国に続くAgrippa街道の端にあたり、ギリシャの商人がこの地にブドウをもたらしたと言われています。

コート・シャロネーズ地区でのメルキュレイの位置づけ

メルキュレイはコート・シャロネーズ地区の5つの村名アペラシオンの１つで、ソーヌ・エ・ロワール県の北端の街シェニーから南に12mの所に位置しています。行政上は、ブルゴーニュ地域圏ソーヌ・エ・ロワール県のメルキュレイ村とサン・マルタン・スー・モンテギュ村がワイン産地として指定されています。

コート・シャロネーズの村名アペラシオンは北からブーズロンBouzeron、リュリーRully、メルキュレイMercurey、ジヴリーGivry、モンタニーMontagnyの5つ。ブーズロンを除く4つの村名アペラシオンにはプルミエ・クリュがあります。グラン・クリュはありません。

メルキュレイのA.O.C.認定は1923年。赤白両方に適用されます。ブルボン王朝最初の国王アンリ4世お気に入りのワインと言われるジヴリィとともに、コート・シャロネーズ地区を代表する銘醸地で、ブルゴーニュの重要なアペラシオンのひとつです。

メルキュレイの気候、畑と土壌の特徴

湿った風を防ぐような立地の斜面に畑が広がっています。他のブルゴーニュの地区同様に寒暖の差が激しく、夏は暑く冬の寒さが厳しい大陸性気候の影響を受けます。収穫期の天候が変わりやすく、そのためワインの出来はヴィンテージに大きく左右されます。

栽培面積は赤が約567ヘクタール、白が79ヘクタール。栽培品種はシャルドネとピノ・ノワール。それぞれのプルミエ・クリュは赤が約153 ヘクタール、白が約14ヘクタールです。主に白い石灰質土壌か赤い粘土質土壌でブドウの成長に適しています。

A.O.C.はメルキュレイとメルキュレイ プルミエ・クリュ。プルミエ・クリュには以下の30つのクリマがあります。プルミエ・クリュの良質のワインはコート・ド・ボーヌ地区の特級品と同等レベルの高い評価を得ています。

Clos de Paradis
Clos des Barraults
Clos des grands Voyons
Clos des Myglands
Clos Marcilly
Clos Tonnerre
Clos Voyens
Grand Clos Fortoul
Griffures
La Bondue
La Cailloute
La Chassiere
La Levriere
La Mission
Le Clos du Roy
Le Clos l'Eveque
Les Byots
Les Champs Martin
Les Combins
Les Crets
Les Croichots
Les Fourneaux
Les Montaigus
Les Naugues
Les Puillets
Les Ruelles
Les Saumons
Les Vasees
Les Velley
Sazenay

メルキュレイのワインの特徴

赤は深みのある濃いルビー色、キイチゴ・イチゴ・チェリーの香りを連想させます。時間の経過とともに、森の下草・煙草・カカオなどのアロマが姿を見せます。果実味がしっかりとしていてとてもフルーティ。

まだ若いうちはタンニンが硬く必要以上にミネラルを感じさせることもありますが、 3年ほどの熟成とともに硬さはやわらぎ、まろやかで見事な肉付きを感じるようになります。一般的な飲み頃は5〜10年です。

素晴らしいヴィンテージのワインの場合、それ以上の熟成に耐えうるしっかりとした肉付きの良いワインが造り上げられます。

白は緑を帯びた淡い黄金色。 シャルドネのアロマの特徴である白い花(アカシアやサンザシ)、ヘーゼルナッツ、アーモンド、シナモンや胡椒などのスパイスを感じます。しっかりとした心地よいミネラル。食事とともに楽しんでいただきたい味わいです。

リリースから3年〜6年以内に飲み頃を迎えます。トップ生産者の手による物や恵まれたヴィンテージの物は10年程の熟成にも充分耐えられます。

メルキュレイとのおすすめのマリアージュ

赤：リッチで肉付きの良いピノ・ノワールは、牛のリブステーキ、ソースを添えた牛や仔羊の料理にぴったりです。また、ローストポークや鶏のシチューはこのワインの豊かなアロマと素晴らしいハーモニーを奏でます。和食であれば、こってりとしたぶり大根なら相手に不足はありません。チーズの選択肢は広く、マイルドなソフトタイプから熟成させたタイプまでOKです。

白：このA.O.C.のシャルドネはスパイシーかつフローラルなブーケを楽しめるタイプ。網焼きした魚などの各種シーフード料理はもちろん、エスニックなアジア料理全般にも気軽に寄り添ってくれます。

メルキュレイの現在の評価

メルキュレイはかつてブルゴーニュ地方で最上のワイン生産地のひとつという評価を獲得していました。しかしながら、ネゴシアンの大量の買いこみと丁寧とは言い難い扱い・販売により徐々にその名声を落とし、最近はどちらかと言えば地味な生産地と見られてしまうことが多いようです。

元々由緒ある歴史を持つ生産地であり、近年は挑戦者的な若手生産者も出現しています。今後の動向に注目していきたいアペラシオンであることは間違いありません。

メルキュレイの著名な生産者

華やかなコート・ドール地区に比べて地味な印象のあるコート・シャロネーズ地区ですが、実はあまり世に知られていない隠れた優良生産者が多い地域でもあります。

メルキュレイにも、これから有名になるであろう生産者が多く控えています。また、ロバート・パーカーが５つ星をつけたグランメゾン「フェヴレ」は、早くからメルキュレイのポテンシャルに目をつけ、このエリアの地名度を上げた草分け的存在です。現在メルキュレイのブドウ畑の総面積のうち約10分の1はフェヴレの所有です。