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フォンテーヌ・ガニャール

Fontaine-Gagnard


シャルドネの聖地といわれるブルゴーニュ、中でも特に高品質な白ワインを産出することで有名な産地がシャサーニュ・モンラッシェです。フォンテーヌ・ガニャールは、1985年に設立された比較的新しいドメーヌながら、シャサーニュ・モンラッシェの中でも特に優秀な生産者といわれています。

異色のキャリアをもつ当主が伝統のドメーヌを受け継ぐ


フォンテーヌ・ガニャールの当主、リシャール・フォンテーヌ氏は元空軍のエンジニアという異色のキャリアを持っています。

1985年にフォンテーヌ氏がブルゴーニュの名門ガニャール一族の本筋、 ドメーヌ・ガニャール・ド・ラグランジュの娘であるローレンスと結婚し、受け継いだ伝統的なドメーヌに夫の姓を追加したことでフォンテーヌ・ガニャールが誕生しました。

2007年には彼らの娘、セリーヌも加わり、親子で精力的にワイン造りに取り組んでいます。なお、本家のガニャール・ド・ラグランジュは、リシャール氏の義父で当主だったジャック氏が、惜しくも2009年7月に享年80歳で他界されました。

現在はリシャール氏と、同じく義弟のジャン・マルク・ブラン氏(ブラン・ガニャール当主)の協力のもとで、ジャック氏の奥様がドメーヌを引き継いでいますが、筆頭となったリシャール氏がガニャール・ド・ラグランジュの相続を控えています。

代表的なワインは、やはりモンラッシェ、バタール・モンラッシェ、クリオ・バタール・モンラッシェのグランクリュですが、レ・カイユレ、モルジョを始めとしたプルミエ・クリュにも注目すべきワインがそろっています。

また、シャサーニュ・モンラッシェ以外にヴォルネイ・クロ・デ・シェーヌ、ポマール・リュジアンなどにも区画を所有し、白ワインだけではなく魅力的な赤ワインも市場に送り出しています。

特異な土壌が生み出す芳醇な白ワインと洗練された赤ワイン


白ワインの産地として有名なシャサーニュ・モンラッシェですが、実は採石地としても知られています。フランスでは、多くの歴史的建造物にシャサーニュで取れた石が使われており、代表的な例ではパリのトロカデロやルーブル美術館のピラミッドに使われている大理石などがあります。

日当たりがよく、ぶどうの栽培に適した畑の基盤は、なんと約1億7500年前!恐竜がのし歩いていたジュラ紀に形成されたものというから驚きです。

フォンテーヌ・ガニャールが所有する約10ヘクタールの畑は、シャサーニュ特有の石灰質を基本とし、さらに砂利質、泥灰質、砂質が複雑に交差した多様な土壌が特徴です。この特異なテロワールから生み出されるフォンテーヌ・ガニャールの白ワインは、コクのある芳醇なミネラル感が特徴です。

白ワインの陰に隠れがちですが、フォンテーヌ・ガニャールの赤ワインも忘れてはならない存在です。19世紀まで、シャサーニュ・モンラッシェでは赤ワイン造りの方が主流で、現在でも赤ワインの生産量が、白ワインをわずかですが上回っているということは、覚えておいた方がよいかもしれません。

シャサーニュ・モンラッシェの東にあるレソージョという区画に植えられた、樹齢45年のピノノワールとガメイ種から造られる赤ワインは、知名度では白ワインに譲るものの、品質面では負けず劣らず高い評価を得ています。

古典的で丁寧な手仕事から生み出されるフォンテーヌ・ガニャールのワイン


フォンテーヌ・ガニャールのワイン造りですが、非常に古典的でテロワールの要素を最大限に引き出すことを最優先に考えたものとなっています。ぶどうの樹の仕立てはギョイヨ式で、収穫量は少なくなりますが、その分、濃縮した果汁が採れるといわれています。収穫は、本家であるガニャール・ドラグランジュ及び義兄弟にあたるブラン・ガニャール両家と合同で行われますが、すべて手摘みです。

白ワインでは、梗(葡萄の粒がついている小枝)を果粒と分離する除梗という作業を行わない場合も多いのですが、フォンテーヌ・ガニャールでは100%除梗を行っています。

発酵前には、ぶどうを密閉式の冷却槽におさめ、硫黄で雑菌を駆逐してから、発酵をさせない状態でぶどうの果汁を果皮に漬けたままにしておく低温浸漬を行っています。フォンテーヌ・ガニャールのワインは濃い色で濃縮感がある、と評判ですが、それはこの低温浸漬による部分もあるのでしょう。

白ワインのアルコール発酵には、228リットルのオーク樽が、赤ワインにはコンクリートタンクが使用され、白ワインは最高15〜26℃、赤ワインは15〜32℃で醗酵されます。その後で赤ワイン、白ワインとも228リットルのオーク樽に入れて熟成されます。

この熟成用のオーク樽は、樫の木の状態で買い付けを行い、それを庭で2年間乾燥させたものを業者に引き渡して製造させたものです。新樽の割合はアペラシオンに応じてブルゴーニュとヴィラージュが20%、1級と特級が30%となっており、白ワインは約12ヵ月、赤ワインは約18ヵ月、樽の中で熟成された後、ボトリングされます。

いずれも大規模なワインメーカーとは異なり、家族経営ならではの丁寧な手仕事ぶりがうかがえるワインづくりといえるのではないでしょうか。