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ドメーヌ・ユエ

Domaine Huet


ドメーヌ・ユエの歴史


後に偉大な醸造家として名をはせることになるガストン・ユエ氏は1910年、オーヴェルニュ地方、プローザ村に生まれました。小さな醸造家ヴィクトール・ユエを父に持ったガストン氏は、パリで育ちましたが、父親ヴィクトールが病に倒れ、その療養のため、1928年ヴーヴレイ村に引っ越します。そして小さなワイナリー、ドメーヌ・ユエをこの地に設立したのでした。同年ガストン氏は、ル・オー・リューの5haぶどう畑が、現在売りに出されていることを友人から聞き、この畑を入手するのでした。

その後の1947年、ガストン氏が当主として後を継ぎます。ガストン氏は第二次世界大戦の時にドイツ軍の捕虜だった際にワインを取りよせ、収容所でワインパーティーを開催したことで知られていますが、一期ヴーヴレイの村長を務めた経歴があります。

当時、ヴーヴレイのワインは、フランス国内においてもほとんど知名度がありませんでしたが、各地で行われたワイン見本市に出展したことで、ヴーヴレイのワインの名は徐々に知られることになります。また、国際ワイン・アカデミー会長をつとめるジャック・ピュイゼ氏の目にとまる幸運にも恵まれ、「ヴーヴレイの造り手、ガストン・ユエ」の名が国内をはじめ、世界中のワイン関係者、愛好家に知れ渡るようになったのです。

ほどなくガストン・ユエ氏は、ヴーヴレイを代表するル・クロ・デュ・ブール、ル・モン、ル・オー・リューなど数多くの銘醸ワインを造ることから、フランスワイン界の重要人物と一目置かれるようになり、ロワールINAO会長を20年間、トゥーレヌ・ワイン生産者組合代表を14年間、フランス・ワイン・アカデミー会長などの重責を歴任しました。

ガストン氏の引退後、1976年より当主となった娘婿のノエル・パンゲ氏は、当主就任直後からビオディナミ栽培に着目し、1987年よりビオディナミの実験を開始、1991年には実験の結果を踏まえ全ての畑で導入、またルロワ、コント・ラフォンなど超一流生産者たちで構成されるビオディナミのグループ、ビオディヴァンに加盟。

しかし、2002年ガストン・ユエ氏が亡くなった際、遺産分割上の事情から、ドメーヌの株式の6割を甘口ワインの熱心な支援者であるアメリカの投資家、中国系アメリカ人、アンソニー・ホワン氏に売却しました。ですがその後も運営の主導はノエル・パンゲ氏が務めました。また、フランスワインの殿堂と呼ばれるアカデミー・デュ・ヴァン・ド・フランスの正会員も務めましたが、2012年オーナーのホワン家とのワイン造りの意見の相違がもとで、ノエル・パンゲ氏はワイナリーを去ることになったのでした。現在はアンソニー氏の娘サラ・ホアン女史と息子ステファン・ホアン氏の兄弟による運営が行われています。

ドメーヌ・ユエの畑


1928年初めて入手した「ル・オー・リュー」、1953年、「ル・クロ・デュ・ブール」、1957年には「ル・モン」を購入し、そして2001年に「ル・ヴォダニス」を取得。現在では、あわせて35haのぶどう畑を所有しています。

ドメーヌ・ユエの特徴


ワイン産地では収穫時期になると日雇いのアルバイトによるぶどうの収穫を目にしますが、ドメーヌ・ユエでは熟した粒だけを選んで収穫するため熟練の技を持つ専門の職人を雇っています。主要品種シュナン・ブランは皮が厚く一つの房の中でも熟し方にばらつきがあり、房ごと収穫していくと熟していないぶどうも混入してしまうのです。よって、畑の端から順番に熟した粒を収穫していき、全てのぶどうを収穫するのに3日ほども要します。1度目の収穫が終わるタイミングで次に収穫できる粒が熟し、ふたたび畑の端から一粒ずつ収穫します。何度も何度も繰り返し、一粒ずつ収穫するわけですから、普通に房ごと摘んでいく収穫作業の何倍もの人手と時間を要します。

一般的なヴーヴレイでは毎年、収穫したぶどうの熟し方で、これはAキュヴェ用、これはBキュヴェ用と選果していますが、ドメーヌ・ユエでは異なります。ユエでは収穫したぶどうの熟し具合を見て、ヴィンテージごとに造るワインのタイプを変えます。貴腐ワインもできれば、キリッとした辛口もできます、さらにはミネラル感たっぷりのスパークリングもできます。1つの銘柄でこんなにも幅広い味わいが造られる産地は他には存在しません。ぶどうが上手く熟さない冷夏の年には甘口ワインは1本も造りません。反対に猛暑によってぶどうがしっかり熟した年には全てを甘口ワインにするなど、ぶどうの熟し具合から造るワインを決定します。甘口ワインが造られない年が数年間も続くというのも珍しいことではありません。

ドメーヌ・ユエの評価


フランスで最も権威のあるワイン評価本クラスマンにて最高評価の3つ星を獲得したドメーヌ・ユエ。フランスに数多くあるワイン生産者の中でも、3つ星の評価を得ている造り手は50軒も無く、さらにロワール地方にはわずか3軒しかありません。ロバート・パーカー氏も5つ星生産者として最高評価をしています。評価が分かれがちな欧米の評論家がみな最高評価をするという造り手はとても稀な事です。また、ニコラ・ジョリー氏と並ぶビオディナミ生産者としても知られています。

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