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ミューレ

Mure

ミューレ家と「クロ・サン・ランドラン」


ミューレ家は1648年から代々続くアルザス及びローファにおける歴史ある生産者です。1935年にアルフレッド・ミューレが、0.35エーカーの「クロ・サン・ランドラン」の畑を家族で単独所有(モノポール)し、現在はアルフレッドの孫である11代目のルネ・ミューレと彼の子どもの12代目となるヴェロニクとトーマスがミューレ家を守っています。

ルネはドメーヌとしてのワイン生産だけでなく、ローファにおいてワインメーカーと提携し、ブドウやワインを買い上げて販売するネゴシアンとしてのワインもリリースしています。

アルザスの特級畑フォルブルクの最南の区画にあるクロ・サン・ランドランは、アルザス品種以外のピノ・ノワールやシャルドネをいち早く栽培した先駆けとして、またその恵まれた地形によってアルザスの中で特に秀でた存在となっています。理由としてまず畑が完璧な南向き、しかも急斜面であることがあげられます。また段々畑は、太陽によって熱せられた石によって支えられていて、地形的に谷向きなので風向きがとても良いのです。

かなり前まで歴史を辿ると、クロ・サン・ランドランという土地は6世紀にはストラスブールの修道院が所有していたといわれており、8世紀時のストラスブールの司教が「アルザスで最も素晴らしい畑」と賞賛したほど恵まれた土地でした。

時とともに所有者がいく度も代わり、しかし消耗されずに大事に受け継がれてきたクロ・サン・ランドラン。このクロ・サン・ランドランを所有するルネ・ミューレは幸運でもあり、また長い歴史の担い手として大きな責任を負うことにもなるでしょう。

アルザス南部、ローファ地区の気候


アルザス南部に位置するローファ地区は、年間平均降雨量が約600mlとアルザスの中でも非常に雨が少ない地域です。これは雨雲をつれてくる西風がヴォージュ山脈の頂によって妨げられているからであり、それがフェーン現象を引き起こして熱風が丘陵に吹き込むことになります。日照量の多さと少ない降雨量は、ブドウの凝縮と低い収量に結びつくのです。2016年は年間降雨量が751mlと比較的多かったものの、ボルドー地区の984mlと比較しても雨量が少ないことがわかります。

ミューレのブドウ栽培


「ブドウが最も優れたテロワールを表現するのは地中の最も深いところである」

これがミューレの基本的な考え方であり、テロワールとはブドウが育つための環境である「場所」「気候」「土壌」など、ブドウを取り巻く全ての自然環境の特徴のことをさします。多くの農作物は土壌によってその出来が大きく左右されますが、ブドウは特に土壌の影響を受けやすい果物であるため、多くの生産者はテロワールを重視するのです。

ミューレのブドウは、1haあたり10,000本という通常の約2.5倍の高い植密度で植えられています。そうすることで土の表面ではブドウ木がお互いに生存競争を行い、ブドウが自らの生命力を発揮して深く根を伸ばすのです。

ブドウ木の仕立てにはギヨー・サンプルまたはギヨー・ドゥーブルを採用し、収穫は手摘みで行われます。収穫量は1haあたり25〜45hl程度と非常に低く、アルザスにおいて許可されている最大収穫量70hlを大きく下回ります。格上のAOCになればなるほど植栽密度は高く求められ、収量は低く求められることからミューレはより厳しい条件を自ら課しているといえるでしょう。

そのほか、除草剤の使用をやめて有機栽培を行うなど、ブドウ木の根を地中深くへ促し、生きた土壌をつくるための畑仕事を最も重視しているのがミューレです。

ミューレのワイン造り


収穫は全て手作業で、収穫されたブドウはカジェットと呼ばれる小さなカゴで傷つけないように速やかに運ばれます。空気圧の破砕機でブドウを丸ごと破砕後、温度調節の出来るタンクで低温でゆっくりと一次発酵を行い、天然の酵母による助力を得てワインはやさしく醸されていきます。

澱引きをせず長期間接触させるシュール・リーを行い、1年以上の熟成を経ます。それによりテロワールに由来するきわ立ったアロマを生み出すことができるのです。

製法はシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵方式を採用しており、18ヶ月の間瓶のなかで澱とともに熟成された後、デゴルジュマン(澱抜き)を行います。

バトナージュを行うことによって清澄化し、熟成後にはごく軽くフィルター濾過を行っているだけです。

また、ルネ・ミューレは1999年よりビオロジー認定されています。ビオロジーとは昔ながらの製法でワインづくりを実施することで、農薬や化学肥料を使わず、ブドウの手摘み、人工酵母を使わず自然酵母のみ、色素抽出しない等の製法で作られます。つまり極力機械も化学物質も使わないワイン製法のことをビオロジーと呼びます。

ミューレの哲学


ミューレの哲学について、当主であるトーマス・ミューレ氏が2010年3月に下記のように語っています。

「私たちは1ヘクタールあたり約10,000本という植密度でブドウを植えています。確かに、現在のアルザスでは1ヘクタールあたり4,000本程度の植密度が一般的です。しかし、150年前はほとんどの畑も私たちのような植密度だったのです。

それが下がってしまった一番の大きな理由は大戦後のことだと思います。株を均等に植えてコントロールするキャノピーマネージメントの浸透、それによってトラクターを使用しての耕作が多くなりました。トラクターを畑に入れるためには畝幅を広げて、密度を下げてあげる必要があります。

現在クロ・サン・ランドランの畑は畝と畝の幅が約1.3mとられています。そして80cmの間隔でブドウ木が植えられています。これによりブドウ木が互いに生存競争をおこない、ブドウは地中深くへ根をすすめます。

クロ・サン・ランドランの畑は太陽の日差しがとても強く、土壌は石灰質が強くなっています。ブドウが根を深く張ることによって、日照がいくら強くても水分が不足せず、ブドウが健全に成熟してくれるのです。真の意味でのテロワールを表現することができるのです。

私たちは10年にわたりビオディナミ栽培を選選んできました。これも健全な土壌をつくり、ブドウ木の根を地中深く下ろすためです。そして低く抑えられた収穫量の効果によりブドウは健全に成熟し、テロワールの個性を引き出してくれるのです。」


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