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イエルマン

Jermann

オーストリア、ブルゲンラント州に起源を持つ創業者


ワイナリー「イエルマン」の創業は、1881年。アントン・イエルマンが、故郷のオーストリアからスロヴェニアを経て、イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州にワイナリーを開業した年にはじまります。

ワイナリーが興隆期を迎えるのは1970年代。4代目となるシルヴィオ・イエルマンの天賦の才と想像力により、その名はイタリア半島にとどろくようになりました。現在、イエルマンが所有するブドウ畑は160ヘクタール。シルヴィオ・イエルマンは、ブドウの栽培は毎日自然と対話するのに似ている、と語るほど栽培重視をモットーにしています。

飲む人に深い精神性を感じさせるワイン


赤ワインに比べると、評価が低くなりがちの白ワイン。ワインづくりの真髄は赤ワインにこそある、と考えていた人々に鉄槌を振り下ろすごとく白ワインの価値を上げた男、それがシルヴィオ・イエルマンでした。彼の作るワインは、モダンで優美、イタリアでもっとも価値ある白ワインとして知られています。

1968年から、北イタリアのコネリアーノにある醸造専門学校に通ったシルヴィオ・イエルマンは、最新の醸造技術を習得します。しかし、当時のイタリアではシルヴィオが信奉したこの最新技術はあまりに斬新すぎ、人々に受け入れられませんでした。伝統に固執する当時のワイナリーの多くは、ひたすら重く変わりばえのないワインばかりを製造していたのです。いたたまれなくなったシルヴィオは、カナダに飛び将来を見すえた新たな醸造方法の改良に邁進します。

その後、シルヴィオが戻ったフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州は醸造業の過渡期を迎えていました。特に同業者のマリオ・スキオペットは若いシルヴィオの野望を理解し、さらにトレンティーノにあるサン・ミケーレ・アッラーディジェで醸造学の造詣を深めるよう助言します。

こうして、シルヴィオ・イエルマンの目的は明確になりました。ただアルコール分だけが浮き立つワインであってはならない、豊かなアロマと香りによってワインを味わう人の魂までも征服するような深みのあるワインを作る、これがフリウリの醸造業にかけたシルヴィオ・イエルマンの夢でした。

イエルマンのワインは今日、イタリアにおける醸造学の進歩を象徴するワインとして世界にその名を馳せています。

イエルマンの傑作「ヴィンテージ・トゥニーナ」


白ワインの名手として並ぶもの泣き名声を持つイエルマン。その代表作といって良いのが、1975年から販売が開始された「ヴィンテージ・トゥニーナ」。バレルやバリックを使用しなくても、優美で高品質なワインが製造できるという輝かしい前例を作り上げた作品でした。実際、「ヴィンテージ・トゥニーナ」はステンレスタンクで熟成されるのが特徴です。また、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リボッラ・ジャッラ、マルヴァシア・イストリアーナ、そして非常にまれなピコリットなど、国際色豊かなブドウの組合せでも知られています。

1ヘクタールあたり40〜60キンタルの低収量が特徴のブドウ畑から生まれた、真のブレンド「ヴィンテージ・トゥニーナ」。その名は、かつてこの土地を所有していた女性「アントニア」に由来しています。フリウリの方言では、「アントニア」が「トゥニーナ」となるためです。「ヴィンテージ・トゥニーナ」の名声は年々高まり、現在ではイタリア白ワインでは卓越した実力を誇る「イエルマン」の顔として君臨しているのです。

U2に捧げられたエレガントな白ワイン「W...Dreams」


1987年、イエルマンの名を世界に知らしめたエレガントなワイン、それが「W...Dreams」でした。英国のロックバンドU2の大ヒットアルバム「ヨシュア・トゥリー」に収録された「Where the Streets Have No Name(名もなき通り)」へのオマージュとして登場したこのワイン、シルヴィオ・イエルマンのメッセージは「Where the Dreams Have No Ends(夢あるところに終焉なし)」。このメッセージが、短縮されてワインの名前となりました。

シャルドネ100%で生産される「W...Dreams」は、シルヴィオ・イエルマンの醸造技術の真骨頂ともいうべき作品としてエピソードとともに世界中に知られるようになったのです。最近でも、ワイン・スペクテーターが選ぶ「イタリアの名ワイン100」に選ばれています。

また、1991年にはワイナリー開業110周年を記念した「カーポ・マルティーノ」が生産されました。陰干しされたトカイ・フリウラーノとリボッラ・ジャッラというフリウリ原産の白ブドウを使用した「カーポ・マルティーノ」は、シルヴィオ・イエルマンの大地への深い愛が凝縮されています。

赤ワインの生産で世間の度肝を抜いたイエルマン


イエルマンの代名詞は「白ワイン」。しかし、赤ワインの製造においてもそのレベルの高さを見せつけました。

まずは、「ピーニャコルッセ」。「ピニョーロ」100%であること、クリュの名前が「コルッセ」であることから名づけられた赤ワインです。ピニョーロは、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州が原産のブドウで、絶滅の危機に瀕していました。イエルマンをはじめとするフリウリのワイナリーによって復活、その質の高さが再認識された品種です。

もう一つは、「ブラウ&ブラウ」。この赤ワインには、シルヴィオ・イエルマンの祖父への思慕と家系への深い愛が込められています。祖父アントンの先祖は、ドイツのフランケン地方出身でした。幼かったシルヴィオは、この祖父が語るフランケン地方のブドウ「ブラウフレンキッシュ」のことが忘れられず、この品種をイタリアの地に植えたのです。

こうして完成した「ブラウ&ブラウ」は、シルヴィオ・イエルマンの愛娘シルヴィア・トゥニーナに捧げられました。シルヴィア・トゥニーナが生まれたまさにその日、「ヴィンテージ・トゥニーナ」が「イタリア最高の白ワイン」の称号を与えられたことを記念してなのだとか。シルヴィオの家族への深い愛が伝わってきます。

イエルマンのワイン


ヴィンテージ・トゥニーナ

ガンベロ・ロッソの最高評価「トレ・ビッキエーレ」、ロバート・パーカー92点、ジェームス・サックリング94点をはじめ、「イタリアで最高の白ワイン」などなど数々の栄誉に輝く「ヴィンテージ・トゥニーナ」。イエルマンの金字塔ともいえるワインです。フリウリの土着の品種と国際的な知名度のあるブドウが奏でる絶妙なハーモニーは、白ワインが表現しうる最高のエレガンスとも評されてきました。

黄金の麦わら色が特徴。蜂蜜、柑橘類、桃、南国のフルーツなどがさわやかに香ります。ほどよい酸味も、独特の風味と洗練を際だたせています。

オムレツ、魚介のパスタ、トマトソースと野菜のパスタ、魚のグリル・煮込み、熟成チーズとおいしく召し上がることができます。

W...Dreams

U2の大ヒットアルバム「ヨシュア・トゥリー」に収録された一曲に捧げられたワインとして名高い「W...Dreams」。夢を抱くことの大切さがそのままワインの名前となったいきさつには、シルヴィオ・イエルマン個人のメッセージも込められています。

シャルドネ100%のこのワイン、誕生のエピソードと甘く優雅なフルーツの芳香から人生の幸福を感じたときにぜひ味わいたいもの。

輝くような麦わら色。セイヨウスモモ、バニラ、野に咲く可憐な花々に、ミネラルがそこはかとなく香ります。フレッシュでありながら温かく、心地よい酸味が絶妙のバランスを生みだしています。

魚介類の前菜、トマトソースを使わない魚介のパスタなどなど、海の幸と最高のマリアージュを堪能できます。