トップ > ブルゴーニュ > ブルゴーニュの注目生産者 > プリューレ・ロック

プリューレ・ロック

Domaine Prieure-Roch


プリューレ・ロックは、60年代のロマネ・コンティの味を再現したいと意気込む自然派生産者です。ブルゴーニュ屈指の名門出身の当主はドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティの共同経営者の一人でもあります。

すなわち当主アンリ=フレデリック・ロックは、自身のドメーヌ「プリューレ・ロック」の運営者であると同時に、世界中の造り手・ワインラヴァーの注目を集め、世界で最も失敗の許されない超名門の経営者でもあるわけです。

自身のドメーヌは非常に家族的な雰囲気で、彼自身伸び伸びと仕事を楽しんでいます。ワインにも良い意味で緊張感がありません。ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティの名が強いる緊張感とはとても対照的です。

プリューレ・ロックの成り立ち


1989年、ニュイ・サン・ジョルジュ村に作られたドメーヌ プリューレ・ロック。このドメーヌの誕生にはドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティの存在が深く関わっています。

当時、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティは借り受けていたロマネ・サン・ヴィヴァンの畑を買収するために自社所有の区画のいくつかを売りに出しました。これをマダム・ビーズ・ルロワ(名門「ルロワ」を率いる著名な女性醸造家)の甥にあたるアンリ=フレデリック・ロックが購入し、1988年このドメーヌが誕生します。また1992年、彼はドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティの共同経営者の一人に就任します。

購入したブドウ畑に足を踏み入れた時、「突然体中の血がざわざわと騒ぎ始め、何かが込み上げてきて、非常に熱いものを感じた」そうです。当時の彼は知らなかったのですが、その畑はドメーヌ・ルロワの二代目であった彼の祖父アンリ・ルロワが過去に所有していたものだったのです。

彼が購入したクロ・ゴワイヨットというヴォーヌ・ロマネ村のこの畑は、コンティ公の時代からある由緒あるもの。現在プリューレ・ロック単独所有のモノポールです。

もはや伝説のドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティの共同経営者の一人、父は名門ルロワの2代目、ルロワのマダム・ルロワの甥。この華麗なDNAを引き継ぎ、現代的な自然派生産者としてビオディナミワインを造るのがプリューレ・ロックです。

素晴らしい畑にその力を発揮させる


プリューレ・ロックの畑は、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティの旧所有畑も含み、立地も土壌も非常に恵まれています。その上で当主は「よいワインを造るためには自分自身で畑を手入れしてブドウを知る必要がある」と 畑仕事を何よりも大切にしています。

彼はドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティの醸造責任者ベルナール・ノブレの指導の元で古文書を研究、古来ブルゴーニュワイン造りに携わったシトー派の修道士が行っていた有機栽培の手法を復活させ、伝統的醸造手法を採用しました。

「微生物の活性化で活沃な土壌を維持し、宇宙の摂理と調和を目指した栽培方法」とロックは語り、「ワインの品質の8割はブドウが決める」という信念でブドウ栽培に向き合っています。

彼の畑では除草剤などの農薬や化学肥料などケミカルなものは使用されず、ブドウの樹・発酵したワインの搾りカス・牛糞などを寝かせたものを最低必要な分だけ肥料として使います。除草は手作業、収穫も手積みです。

古式ゆかしさと自然派とDRCの融合


手摘収穫した古樹のブドウは皮が厚くて果汁の少ないものを中心に選果し、房をまるごと発酵槽に入れ、天然酵母によって発酵。機械を使わず、人の足でブドウを潰して「醸し」を行うという古式ゆかしいワイン造りにこだわります。

熟成用の樽はドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティが半世紀以上前に買い付けし、20〜30年に渡って乾燥させた樽を共同で使用。1992年からは酸化防止剤としての亜硫酸の使用をやめています。澱引きはせず無濾過で瓶詰めをします。

彼のワインは、補糖(シャプタリゼーション)を行いません。冷涼な気候のブルゴーニュでは、日照時間に問題があった場合、補糖によりアルコール度数を上げることは珍しくありません。しかしながらこのドメーヌでは、日照時間に恵まれない冷夏の年であっても補糖は行わず、「収穫年の姿をありのままに表現する」ことにこだっています。

エチケットに込められたメッセージ


描かれているロゴは、エジプトの古文書が由来です。 左側にある緑色の模様はブドウの樹、右下の3つの赤丸はブドウ、ブドウの上には二つの黄色い楕円。上の楕円は神、その下の楕円は人を表します。ワインは 自然(神)と人間の力によってを造り出されるというロックの考えが込められています。

プリューレ・ロックのワインの特徴


淡い色合い、軽やかさ、全房発酵による華やかな香り。ブルゴーニュの自然派生産者らしい味わいです。抜栓後、香りが開いてきた頃の味わいや余韻には彼の目指す「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ」のDNAを感じることができるはずです。

上等なワインは長期熟成してこそ本領発揮と言われますが、プリューレ・ロックのワインは若くても美味しく飲めるものを目指しており、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティを強く意識しながらカジュアルな現代性も追求しています。

また、ビオディナミワインには、独特の還元臭やボディの脆弱さがあり、苦手意識を持つ方が多いのも事実。しかし、プリューレ・ロックのワインは一般的な「自然派」とは趣が異なります。ピノ・ノワールを例にすれば、純粋なピノ・ノワールがチャーミングな笑顔を振りまき、まるで「ぶどうを育んだ大地に感謝」したくなるような味わいです。

一般的なブルゴーニュワインのイメージである「繊細さ」や「エレガント」といった緊張感を伴う味わいとは少し趣の異なる、自然派ブルゴーニュワインの世界が軽やかに広がっています。