モンフェッラート

Monferrato

モンフェッラートは、イタリア・ピエモンテ州の一部の地域の名称です。丘陵が広がる地域で、同じピエモンテにあるランゲ・ロエロなどと並んでワイン造りが盛んです。またモンフェッラートはワインのD.O.C(保護原産地呼称)の名称でもあり、アスティ県・アレッサンドリア県の広い範囲をカバーするワインの総称でもあります。モンフェッラートとして生産されるワインの量は年間でおよそ650万本です。

モンフェッラートは実に多種多様なブドウ品種を使い、混醸方法もバリエーションがあります。赤ワインではドルチェット、バルベーラ、カベルネ・ソーヴィニョンなどを混ぜるもの、白ワインではコルテーゼ・アルネイスの他、ヴィオニエを使う珍しいタイプまで様々です。よって、モンフェッラートと言えばこれという明確な特徴はありませんが、多様なワインを生み出す力があると言えます。

モンフェッラートには、D.O.Cの1ランク上のD.O.C.G(純正保証原産地呼称)に認定されているワインが2つあります。モンフェッラート産のワインの中でも特徴的で、上質と認められた2つの銘柄です。

バルベーラ・デル・モンフェッラート・スペリオーレ

2008年にD.O.C.Gに認定されたワインで、アスティ・アレッサンドリアの2つの県にまたがる銘柄です。バルベーラ・デル・モンフェッラートにはスペリオーレとノーマルがありますが、D.O.C.Gとして認められたのはスペリオーレのみです。ノーマルは微発泡や早飲みタイプが中心でフレッシュな印象なのに対し、スペリオーレはパワフルで長期熟成用のタイプも造られています。

ブドウの品種は、名称にあるとおりバルベーラが中心です。バルベーラはピエモンテ州で人気のある黒ブドウであり、ストレートな果実味が特徴で親しみやすいのが特徴です。酸味も十分に感じられます。ちなみに、ほとんどのブドウ品種はイタリア語で男性名詞ですが、バルベーラだけは唯一女性形であり、ラ・バルベーラと呼ばれています。バルベーラの他に、ドルチェット・フレイザなど、ピエモンテ州独自のブドウが使われています。

赤ワインに関しては、D.O.C.Gのルールにより熟成を14ヶ月以上、その中で樽熟成は6ヶ月行います。さらに、原料ブドウにはバルベーラを85%以上使用しなければなりません。よって複数品種を混ぜて造りますが、あくまでもバルベーラの香り・味わいが中心になります。早飲みできるタイプのワインも多く見られますが、なかには長期熟成させるタイプもあります。ピエモンテでのビッグ・ヴィンテージとなった2001年産は現在でも高い人気を誇ります。

バルベーラ・デル・モンフェッラート・スペリオーレは、ピエモンテの伝統的な品種・伝統的な製法で作られたもので、地元では日常的に親しまれているワインです。D.O.C.Gではありますが、特別な日にかしこまって飲むような銘柄ではなく、日々の食事のお供に楽しめるカジュアルワインと言えます。

ルケ・ディ・カスタニョーレ・モンフェッラート

2010年にD.O.C.Gに認定されました。ピエモンテ南部のアスティ地方の赤ワインであり、ミディアムボディの辛口タイプが中心です。ブドウ品種はルケという、他ではほとんど見られない珍しい品種を主体としています。

特殊な品種であるルケの個性的な味わいを生かしたワインで、昔から特別な席でふるまわれるワインとして有名でした。熟成タイプよりも早飲みタイプが主流です。外観はやや濃いルビー、華やかで香り高いワインです。味わいはタンニンがやや多めで、後味にはやや苦味が残ります。このワインの生産者に関しては、スカルバ社の評価が特に高く、4〜5年かけて独特の気品を感じる仕上がりになります。

ルケはそれほど知られている品種ではありませんが、その歴史は意外にかなり古く、フランスのサヴォワ地方から持ち込まれたのがルーツとされています。現在サヴォワでは栽培されておらず、ピエモンテのモンフェッラートがルケの中心的な産地となっています。名前の由来は「roche」であり英語ではrockです。モンフェッラートの中でも岩の多い地域に多く見られたことから付けられた名前だそうです。

ルケの香り・味わいを表現すると、ワイルド・野性的・荒々しいといった印象です。しかしワインとして醸造すると、野性味を残しつつも上品で洗練された印象が中心となります。一味違った優雅さを味わうことができます。

イタリアはルケ以外にも、他の国ではあまり見られないマイナーなブドウ品種が多くあり、フランスとは違う意味での奥深さがあります。サンジョヴェーゼやネッビオーロと言った、メジャーで有名な品種のワインももちろん良いですが、時にはその土地ならではの独自のブドウ品種のワインを味わってみてはいかがでしょうか。