ファルツ

Pfalz

ドイツの「ワイン街道」を皆さまご存じの方も多いのではないでしょうか。有名観光地として世界中からワイン好き・グルメ好きの観光客が訪れることで知られています。ファルツは、この街道を抱くドイツが誇る有名ワイン生産地です。

ワインと共に地元の郷土料理を出す田舎風レストランが数多くある有名グルメスポットとしても知られています。また、ファルツは1年を通して200ほどのワイン祭りが開催されているまさに「グルメとワイン」をふんだんに楽しむ地域といえます。このように地元のレストラン事業の活性化とあいまって、この地のワイン事業は大成功を収めています。

そのワイン生産量はドイツNo.2の地であり、赤ワインに関しては、ドイツトップの生産量を世に送り出しています。ドイツでたまたま何気に入ったレストランで出されるリーズナブルで飲みやすい赤ワインを出されたらそれはファルツからの物であるほどドイツ人にとっては外でも食卓でも大変ポピュラーなワインなのです。

ファルツ土地柄と気候

ファルツ地域は、ライン川を挟んで反対側にドイツにNo.3生産地のバーデン、西部にザールラント州、南部にはアルザス、北部はNo.1生産地のラインヘッセンという好立地に位置しています。そして、主にこの地域の南東部側にワイン生産地が密集しており、地域全体の北から南までは、縦一直線の横断距離が約85kmほどのワイン地帯となっています。

この辺り一帯の気候は地中海性気候の影響を受けており、ドイツ国内でも最も温暖な地域で平均気温は11度、日照は年間1800時間に相当し、特にフェルツァーヴァルト山地にある斜面畑では、冷たい空気、激しい雨から守ってくれています。

ファルツのぶどう畑・土壌

ファルツ地方は北と南に全く性質の異なる代表的なベライヒが2つあります。その北側にあたるミッテルハルトは、粘土と泥灰土が複雑な割合が混在し、そして南側にあたるズードリッヒェは、石灰岩、粘土、黄土が混在し、ロームも多目な豊かで重めの土壌です。

この地で栽培されるぶどう畑は、赤ワイン用のドルンフェルダー、シュペートブルグンダーの品種がメインで畑全体の3分の2ほどがこの2つで埋め尽くされています。そのうちの3分の1がドルンフェルダーになります。これ以外に外来人気品種のカベルネやソーヴィニヨン、メルローなど数10種類のブドウも同時に栽培されています。

またファルツでは、リースリング種を使った白ワインの特産地でもあり、そのリースリング白ワイン生産量に関しては、世界一を誇る地域でもあります。

ファルツのワインの特性

ドイツのワインと言えば、「甘口白ワイン」というイメージが、浸透しています。現にドイツ国内でも1992年ぐらいまでは白ワインをメインに飲まれており、当時の国内でのワイン消費量、約75%に相当する量でした。このファルツの名産はその甘口系白ワインの代表格ともいえるリースリング種を使ったものですが、近年ドイツのみならず世界中でワインテイストのトレンドはデイリーに飲むワインは甘口よりも糖度が低い辛口が好まれる傾向にあり、そういった背景から辛口ワイン造りに徐々にシフトチェンジしてきつつあります。

リースリング種の白ワインは、基本的に酸、ボディー、共にバランスが大変良いワインで、そのフルーティーさが顕著に出ているワインで、アロマは、グレープフルーツ、レモン、ライム、リンゴ、パッションフルーツ。長期熟成の高級な物になりますと、アーモンドや灯油を思わせる独特の熟成香があり、この香りがワイン愛好家を虜にしています。

また、近年は、外来品種のシャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、赤ではピノ・ノワールなどの高品質なワインの醸造に遅ればせながら造られるようになり、ピノ・ノワールの収穫高は群を抜いています。

ファルツの評価と代表的な生産者

ファルツの代表的なワイナリーは、約300年以上の歴史を誇る「ヘンゼル醸造所」です。ヘンゼルの現在の当主トーマスは、ドイツで最も優秀な若手醸造家の一人として名を連ねています。彼は、このファルツの温暖気候を生かし、従来の伝統的なドイツワイン造りのみにこだわらず、ドイツ外からの外来のぶどう品種を使って独創的なワインに仕上げる造り手いえます。

ヘンゼルでは、前所有者はビオロジック方式での栽培でしたが、現在の栽培方法はビオディナミを採用しており、自然のリズムを理解し、尊重しつつ作業しています。栽培醸造に必要な物は自給自足に近い形にしており、余分なものを外から持ち込まないようにしている。自身の土地の個性を、顕著にワインに表すことを心掛けています。

そしてこの地の生産者として忘れてはならないのが、「ヴァイングート・フォン・ウィニング」。ここは、「VDP（優良生産者組合）」に最も近年高い評価を受けている造り手です。900年前の1848年に設立したこのワイナリーは、レオポルト・フォン・ウィニング氏は、当時の皇帝より称号を付与された事でえ知られていますが、現在のドイツ「VDP」設立の功労者となり、優れた品質を表す名称となっています。