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チェルバイオーナ

Cervaiona

たった一代で造り上げたイタリアで一番高価なワイン畑


トスカーナ州モンタルチーノ村の北東にあるチェルバイアの地。ここはブルネッロ・ディ・モンタルチーノが有名になるずっと昔から、チェルバイアで美味しいワインができると地元で伝えられてきた程、サンジョヴェーゼ種に適した土地です。

「チェルバイオーナ」は、1976年にアリタリア空港のパイロットをしていたディエゴ・モリナーリ氏が、45歳でそれまでのキャリアを捨て、チェルバイアの小さな畑を購入し、心機一転、夫婦で始めたワイナリーです。

ディエゴ氏は地元の出身ではありませんでしたが、近隣の農家からも助言を受けつつ、熱心に勉強に勉強を重ね、4年後には初のブルネッロ・ディ・モンタルチーノを完成させます。

チェルバイアの畑で作られたブルネッロは、すぐにワイン批評家たちの目に留まり、良質なガレストロの土壌から生み出されたブルネッロは、高い評価を受けます。

「ブドウに最適な土地だから、なるべく自然を生かして栽培する」を基本とするモリナーリ氏のワイン造りは、すぐに大きな成果をあげていきます。数多くの優れたブルネッロの中でも、際立つ味わいが評価され、多くのワイン誌でも高得点を獲得しています。

ディエゴ氏はたった一代で、チェルバイオーナをブルネッロを代表するワイナリーとして育て上げることに成功したのです。

上海ベンチャー企業のアメリカ人オーナーによる買収


2015年10月、イタリアワイン界のみならず、世界中でチェルバイオーナの売買が話題になりました。それというのも、上海のベンチャー企業オーナーでもあるアメリカ人大富豪がイタリアの史上最高価格でチェルバイオーナを購入したのです。

創始者のディエゴ氏は、当時すでに84歳。現役を引退するにあたって、長年の友人であったアメリカ人に、1600年代のヴィッラ、小さな礼拝堂、ルネッサンス様式の庭園、そして3ヘクタールのブドウ畑、計13ヘクタールを6,000,000ユーロで売却することを決めたのです。

新オーナー、ゲーリー・リッシェル氏は、ハーバード大学を卒業後、シリコンバレーで数々のベンチャービジネスに携わってきた実業家ですが、その傍ら熱心なワイン愛好家、ワインコレクターとして知られていました。

リッシェル氏は、今回の買収の前にも、フェラガモ資本のモンタルチーノのワイナリー「カスティリオーネ・デル・ボスコ」に投資した、という経験の持ち主ですが、チェルバイオーナの購入は彼の長年の夢だったそうです。チェルバイオーナの畑は、手を入れるのにちょうどよい大きさの1.6ヘクタール程。絵のように美しいトスカーナの丘陵地に位置し、しかも最良のブルネッロが生まれる場所、というのが理由だそうです。

チェルバイオーナには、リッシェル氏以外にも沢山の購入のオファーがあったそうですが、11年にわたる努力の末、リッシェル氏がオーナーの地位を手にしたのです。

現在、畑の運営は、ワイン輸入のエキスパートである共同経営者のマシュー・フィオレッティ氏が携わります。長年の夢を実現させたリッシェル氏が、どういうブルネッロを生み出していくのか、注目が集まっています。

チェルバイオーナの畑


標高400メートルの丘にあるチェルバイオーナのブドウ畑は、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ用に1.6ヘクタール、ロッソ・ディ・モンタルチーノ用に0.7ヘクタール、チェルバイオーナIGTに0.7ヘクタールで、合計3ヘクタールの小さな土地です。

土壌は砂が混じったガレストロで、これがサンジョヴェーゼの生育に最適と言われます。

畑は、1978年、1986年、2000年にブドウの樹を植え、その時期によって3区画に分かれています。1ヘクタールあたりの植樹密度は3600本以下です。現在は、ブドウ畑の一部を新しいプランによって、ブドウの樹をグイヨ方式で植え直していて、畝の幅も密にしています。

また、2015年より新しいオーナーの意向でビオロジック方式に転換しています。

2017年からは、これまでオリーブ畑として使われていた1.5ヘクタールの土地を、サンジョヴェーゼ用に転換することによってブドウ畑を拡張しています。オリーブよりもブドウの方がより適していると判断したこの土地は、新しい方針の基、改革され、今後チェルバイオーナでも重要なクリュになることが期待されています。

チェルバイオーナのワイン醸造


チェルバイオーナのワイン造りは、徹底的に職人技術に支えられたものです。ブドウの実は昔ながらの方法で手摘みをし、良質のブドウの実のみを完璧に選別します。その後、ブドウの実は潰すことなしに、15、25、30hlの木でできた大型の桶に移されます。

醗酵は土着の天然酵母を用います。醗酵の最初の週は、手動で攪拌を行いますが、このことでバランスの良いエレガントな味わいを作ります。醗酵が終わると圧搾を行いますが、プレスワインは使用せず、フリーランのみワインに用います。木桶に移したワインはマロラクティック醗酵を春ごろまで行いますが、その間、細かいブドウのカスが残っているので、定期的に攪拌します。

その後、スロヴォニア産の楕円形のオーク樽(10、17、20hl)に移し、30カ月熟成させます。チェルバイオーナでは、樽も桶も、オーストリアにある1875年創業の老舗の樽工房のものを使用しています。

チェルバイオーナでは、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノが年間約7,400本、ロッソ・ディ・モンタルチーノが約4,000本生産されています。またサンジョヴェーゼだけではなく、カベルネ・ソ―ヴィニヨン、メルロー、シラー、マルヴァジア・ネーラで作られるチェルバイオーナIGTが約3,000本生産されています。