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ヴィンサント

Vinsanto


イタリアのデザートワインを代表するヴィンサント。トスカーナの名産カントゥッチと言う固いビスケットをヴィンサントに浸して食べる、というユニークな飲み方で世界的に有名です。

そのため、ヴィンサントと言えば、トスカーナと言うイメージがありますが、意外なことにヴィンサントはイタリアの中北部の各地で作られていて、それぞれの独自の製法でDOCに認定されています。

ヴィンサントはイタリア語に直訳すると「聖なるワイン」とでもいう神々しい名称です。キリスト教に関連するのかと思いきや、その起源はギリシアのサントリーニ島のヴィンサントに由来しているというところも、意外なワイン。

収穫したブドウを圧搾する前に乾燥させて糖度を十分に上げてから、良質なブドウの実のみを醸造するヴィンサントは、普通のワインより手間暇がかかるため高価なワインです。昔ながらの伝統的な製法で作られる高品質なヴィンサントは、だんだん希少価値になりつつあります。

ヴィンサントの歴史


中世後期、ヴェネツィアの商人たちが、ギリシアから輸入していた商品の中で人気だったのが、ギリシア産の甘いワインです。5000年以上ものワイン造りの歴史を持つギリシアのワインは、当時のイタリアでは高級品。特にサントリーニ島のヴィンサントという甘いワインが、高位聖職者や貴族しか手に入れることができない貴重なワインとして珍重されていました。

そのためヴェネツィア近郊の農家で、ギリシアの甘いワインをまねて造り出したのが、イタリアのヴィンサントの始まりだと言われます。18世紀には、「ブロニョーリゴ(ヴェネト州ヴェローナの近郊)のヴィンサント」と記述のある文献があり、その頃にはすでにイタリアでもヴィンサントが作られていました。

その後イタリアの中北部各地にヴィンサントが広まり、現在ではそれぞれの地域でDOCに認定されています。名前は同じヴィンサントでも、気候、土壌のみならず、ブドウの品種も全く違うヴィンサントなのですから、それぞれ飲み比べてみたいものですね。

ヴィンサントの製法


糖分を高めるために、収穫後、風通しの良いところに干しておきます。春ごろになって、カビの生えていない上質のブドウの実のを使って作られます。

このため通常のワインを造るより、場所も時間も手間もかかります。ワインの醗酵も、糖分がかなり高いために難しく、通常最低3年の熟成期間が必要です。そのうえ、100sのブドウからできるワインの量は、約15リットルほどです。そのため、希少価値が高く、珍重されています。

ヴィンサント・トスカーナ


数あるヴィンサントの中でも一番有名なトスカーナのヴィンサントですが、地域ごとにヴィンサント・ディ・カルミニャーノ、ヴィンサント・ディ・モンテプルチアーノ、ヴィンサント・デル・キャンティ、ヴィンサント・デル・キャンティ・クラッシコ、の4種類もあり、それぞれがDOCに認定されています。

ヴィンサント・ディ・カルミニャーノは、フィレンツェやプラートで作られるヴィンサント。マルヴァジーア・ビアンカ・ルンガとトレッビアーノ・トスカーノを用いて作られます。

ヴィンサント・ディ・モンテプルチャーノは、シエナで作られるヴィンサントです。グレケット種が75%〜100%、その他、マルヴァジーア・ビアンカ、トレッビアーノ・ジャッロを用いることができます。

ヴィンサント・デル・キャンティは、キャンティ地方で作られ、ヴィンサント・デル・キャンティ・クラッシコは、キャンティ・クラッシコの地方で、トレッビアーノ・トスカーノとマルヴァジーア・ビアンコで作られます。

また、キャンティ、キャンティ・クラッシコともに、オッキオ・デルペルニーチェと言うサンジョヴェーゼを使って作られる赤ワインのヴィンサントもあります。

コッリ・ピアチェンティーニ・ヴィンサント・ディ・ヴィグレーノ


エミリア・ロマーニャ州、ランブルスコワインで有名なコッリ・ピアチェンティーニ地方のDOCコッリ・ピアチェンティーニ・ヴィンサント・ディ・ヴィグレーノ。

ピアチェンティーニの土着品種サンタ・マリア種とメラーラ種が最低60%、ベルヴェディーノ、オルトゥルーゴ、トレッビアーノ・ロマニョーロが最高40%で作られます。

亜流酸塩の使用とろ過することが禁止されていて、最低48カ月は木の樽で合計して最低60か月の熟成期間が義務付けられています。アルコール分は18%以上。

ヴィンサント・ディ・トレンティーノ


北イタリアのトレンティーノ地方は、オーストリアやスイスとの国境にも近いところに位置しています。ここでは、赤、白、ロゼなど様々な種類のワインが造られています。

DOCヴィンサント・デsィ・トレンティーノは、土着の品種ノジオーラを85%以上使って作られます。木の樽の中で最低36カ月の熟成が義務付けられていますが、収穫後、5、6年が飲み頃です。アルコール分は16%。

ヴィンサント・ディ・ブロニョリーゴ


イタリアで最初にヴィンサントを作っていたとされるヴェネト州のブロニョリーゴは、現在ではソアヴェやヴァルポリチェッラの生産地です。現在、ヴィンサントは10件にも満たない生産者の間で、伝統的な製法を守り造り続けています。

ヴィンサント・アッフミカート・デッラルタ・ヴァッレ・デル・テーヴェレ


ウンブリア州のペルージャ県にあるチッタ・ディ・カステッロの近くには、数あるヴィンサントの中でも珍しい燻製させたヴィンサントがあります。タバコの葉を暖炉の煙でいぶしながら乾燥させる場所に、熟したブドウの実も置いて乾燥させるのです。

ブドウはトレッビアーノ、マルヴァジーアのほか、グレケット、カンナイオーロ、ヴェルナッチャ、サン・コロンバーノなどのさまざまな品種を使います。このヴィンサントは、ほのかにタバコの香りがする甘いワインという独特な味わいです。

現在では、生産者がとても少なくなっていましたが、スローフード協会によって支援されています。