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フラスカーティ

Frascati


首都ローマから南に位置するフラスカーティ。カステッリ・ロマーニと呼ばれる小高い山々がそびえる場所に位置しています。古代ローマ時代には、皇帝や貴族といった富裕層がこぞって別荘を建てたこのフラスカーティは、当時からおいしいワインの生産地として有名でした。

節倹を提唱していた共和制時代の謹厳な農学者大カトーでさえ、この地のワインの美味には言葉惜しまず絶賛しているほど。そして、農耕の神サトゥルヌスがオリンポスを追われてたどり着いたこの地で、ブドウの栽培を普及させたという伝説まで生まれたのです。

ローマの貴族たち御用達 フラスカーティのワイン


当時は、フラスカーティの古代名にちなんで「トゥスクルム」と呼ばれていました。「フラスカーティ」と呼ばれるようになったのは中世。トゥスクルムはローマ帝国の衰退とともに没落し、1119年には街もブドウ畑も壊滅する被害を受けてしまいます。土地の人々はその後、身近で手に入れた枝や木材を使って雨風をしのぐ家を建てました。こうした木材を、イタリア語では「フラスケ」といい、これが「フラスカーティ」という名前の由来になったそうです。

ルネサンスの時代になると、ローマから近いという地の利を活かしてフラスカーティのワインは法王や貴族たちに愛されるワインとしてよみがえります。

とくに、身近に当時の「ソムリエ」ともいうべきサンテ・ランチェーリオを抱えていたパウルス三世は、フラスカーティのワインの味を知ってからは、それまで彼が耽溺していたフランスのワインを飲まなくなるほどフラスカーティのワインを愛していました。また、ミケランジェロのパトロンであったユリウス二世、法王として手腕を振るったシクトゥス五世も、フラスカーティのワインファンとして知られています。

古代ローマの貴族たちの例に倣って、ローマ法王庁系の貴族たちの多くがフラスカーティに別荘を建築し、風光明媚な土地柄とワインを心から堪能したのです。

現代も、ローマっ子は週末になれば気軽にカステッリ・ロマーニ地方にやってきて、素朴な田舎料理とワインをたらふく飲むのが慣習となっています。

フラスカーティのワインの特徴


フラスカーティのワインの生産は、コッリ・アルバーニと呼ばれる小高い丘陵地帯で行われています。ブドウの栽培は、フラスカーティ、グロッタフェッラータ、モンテ・ポルツィオ・カトーネ、モンテ・コンパトリの地域に広がる8300ヘクタールの土地に広がっています。高度は、海抜70メートルから500メートル。斜面の多くが、西あるいは北西に面しています。

フラスカーティがあるカステッリ・ロマーニは、もともと火山があった場所。そのため、火山灰、リトイド、火山礫などが多いのが土壌の特徴です。

1966年には「DOC(原産地統制名称)」、2011年に「DOCG(原産地統制保証名称)」と認められたフラスカーティのワインには、次のような条件があります。

1、マルヴァシア・ビアンカ・ディ・カンディアとマルヴァシア・デル・ラツィオ(マルヴァシア・プンティナータ)が単独で、あるいはブレンドされて最低でも70%配合されていること。

2、ベッローネ、ボンビーノ・ビアンコ、グレコ・ビアンコ、トレッビアーノ・トスカーノ、トレッビアーノ・ジャッロは単独で、あるいはブレンドされて最高30%まで配合可能。

フラスカーティのワインは、力強い果実の風味が特徴です。また、ほぼカステッリ・ロマーニ地方でのみ栽培が行われているマルヴァシア・プンティナータが柔らかなニュアンスを演出しているともいわれています。このマルヴァシア・プンティナータは、他の地域では病気になりやすく気候との不適合で栽培が不可能とされています。さらに、トレッビアーノ種を配合することでフレッシュな酸味もワインに反映されているのです。

フラスカーティのワインのいただきかた


フラスカーティのワインは、中部イタリアの白ワインの典型といわれており、前菜、コース料理、デザートやチーズとも合わせやすいのが特徴です。ワインは通常のタイプとスプマンテの2種。

黄金色に反射する麦わら色をしています。パッシートやブドウの収穫を遅らせたタイプは、色が濃いめ。香りは、非常に強烈で奥が深い果実の香りが特徴です。メロンやパイナップルといったトロピカルフルーツの根底に、柑橘類やフレッシュな草花の香りを感じ取ることができます。

パッシートと収穫を遅らせたタイプは、カクタスフルーツやミネラルの香り。味わいは、柔らかめでほどよい力強さがあります。柑橘系の香りが鼻腔を抜けて、味覚を長く楽しむことができます。スプマンテタイプは、清涼感とミネラル感が良い感じでマッチ。パッシートタイプは、より長くその余韻を楽しめます。

フラスカーティのワインは、アペルティフとしておいしく飲むことができるほか、前菜、スープ、魚介類、鶏肉、ほどよい熟成のチーズとはとてもよい相性です。

ラツィオ州の郷土料理であるカルボナーラ、アマトリチャーナ、カーチョ・エ・ペーペ、サルティン・ボッカとはもちろん、アーティチョークやズッキーネなど季節の野菜ともおいしく召し上がれる、柔軟性のあるワインなのです。