コルトン Corton

コート・ド・ニュイの南端であるニュイ・サン・ジョルジュから南に車で10分程度走ると、コルトンの丘と言われる、標高400メートル弱の小高い丘陵地が見えてきます。山頂部分は森林で覆われているものの、北側を除く斜面は、東側のラドワ村、南側のアロース・コルトン、西側のペルナン・ヴェルジュレス村へと跨って、丘をぐるりと囲むようにブドウ畑が広がっています。このコルトンの丘の斜面、実に160ヘクタールという広大な土地が、コルトンとコルトン・シャルルマーニュというグラン・クリュ（特級畑）を産み出します。

コルトンの歴史を語る上で必ず現れるのが、カール大帝。西暦800年頃の西ローマ帝国の皇帝であり、フランス語で「シャルルマーニュ」と言われた彼はワインが大好きで、このコルトンの丘にブドウ畑を所有していましたが、ある時赤ワインで髭を濡らしていたのを馬鹿にされ、それ以降白ワインしか飲まなくなったと言われています。コルトンの丘でも白ブドウの栽培しか許さなくなったと言われており、これがコルトン・シャルルマーニュの誕生と、一部では言われていますが、多分に伝説に近いストーリーで、白ワインは造られていたとしても、現在のコルトン・シャルルマーニュとは別物と考えたほうが良いと思います。実際に1000年後の1800年前後は、コルトンの丘では殆ど赤ワインが造られていたと言われています。

入り交じるコルトンとコルトン・シャルルマーニュ、そしてコルトン・ブラン

赤ワインのコルトンは、コルトンの丘の斜面の比較的低い部分で多く造られています。ここは粘土や鉄分が多い土壌で、ここで造られるブドウは、コクが有りミネラルを豊富に含む、ガッシリとしたワインを産み出します。同じ畑でピノ・ノワールではなくシャルドネを植えて白ワインを造ると、コルトン・ブランというグラン・クリュとなります。造っている生産者や生産量が限られており、非常に貴重なグラン・クリュの一つです。

また、もう少し斜面の上に行くと、石灰中心のコルトン・シャルルマーニュの畑となります。シャルドネに適した土壌ですが、ここでピノ・ノワールでワインを造ると、コルトンのグラン・クリュを名乗ることが出来ます。

コルトンを語るに欠かせない、リューディー（小区画）の存在

160ヘクタールと広大な面積を誇るコルトン。昔はこのあたりのワインは大体「コルトン」という名前を勝手に名乗っていたようで、1920年代にアペラシオンの線引がされた以降も、「コルトン」を名乗りたい生産者によって度々訴訟が起こされ、その面積は徐々に増えていった歴史があります。最も新しいところでは、1978年にも一部の区画が「コルトン」に昇格しています。

そうしてどんどんと面積を拡大していくと、どうしても区画毎に品質の差が出てきます。また、「コルトン」と名乗れさえすればワインが高く売れるため、生産者によっては努力を怠る場合もあり、グラン・クリュとはいえ、ワインによって当たり外れが大きい事で知られています。

そうした中で、優良なコルトンを選ぶのに注目したいのが、リューディーと言われる小区画です。コルトンでは「コルトン」という名称の後に、リューディーを表記することが許されています（例：「コルトン・ブレッサンド」「コルトン・ルナルド」）。コルトンの中でも優秀なリューディーを所有する生産者は、それがセールスポイントになるのを分かっていますので、その区画を明記します。

一方で、複数のリューディーのブドウをブレンドした場合は、単純に「コルトン」と表記します。また、比較的品質が劣ると言われているリューディーの場合、それを明記してしまうと価値が下がるので、敢えてリューディーは名乗らずにただの「コルトン」としてリリースする生産者が多いようです。ですので、コルトンの後にリューディーが併記されている場合は、生産者の自信の表れであり、品質も高い可能性が多いと言えると思います。

一般的に評価が高いリューディーとして、「ル・コルトン」「クロ・デュ・ロワ」「ブレッサンド」「ル・ロニェ・エ・コルトン」「ルナルド」等があります。

ちなみに、コルトン・シャルルマーニュになると、リューディーの記載は禁止されていますので、「コルトン・シャルルマーニュ・ルナルド」といった表記は存在しません。

DRCも進出。改めて注目を浴びるコルトン

コート・ド・ボーヌ唯一の赤ワインのグラン・クリュであるコルトンですが、コート・ド・ニュイの輝かしい赤のグラン・クリュ達と比べると、やや地味な印象は否めません。そんな中、「2009年からDRC（ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ）がコルトンをリリースする」というニュースは、ワイン業界を驚かせるニュースでした。

DRC自信が畑を所有するのではなく、畑を賃借してワインを造るという形です。元々の畑を所有しているのは、プランス・フローラン・ド・メロード。メロード家はベルギー貴族の分家であり、古くからコルトンを所有している伝統ある家系。コルトンの中でも一等地と言われる、クロ・デュ・ロワ、ブレッサンド、ルナルド、マレショードといった区画を所有していました。

かつては優秀な畑を所有していながら、努力を怠っている生産者として、ロバート・パーカー氏から名指しで酷評されていた時期もありましたが、2000年以降はそのポテンシャルを取り戻していました。2008年に当主が亡くなり、子息に跡継ぎの意志が無いことから、2009年からDRCがその畑を30年契約で賃貸契約を結びました。

2009年が初ヴィンテージとなったDRCのコルトンは、クロ・デュ・ロワ、ブレッサンド、ルナルドという最高の区画にある古木のブドウだけをブレンドして造られます。DRCがコルトンに参入したことは、コルトンの他の生産者からも好意的に評価されており、コルトン自体の評価が高まることが期待されています。

コルトンの主なリューディー（小区画）

ル・コルトン（Le Corton）
ブレッサンド（Les Bressandes）
レ・ショーム（Les Chaumes）
クロ・デュ・ロワ（Le Clos du Roi）
コンブ（Les Combes）
グレーヴ（Les Greves）
ランゲット（Les Languettes）
グランド・ロリエール（Les Grandes Lolieres）
マレショード（Les Marechaudes）
バス・ムロット（Basses Mourottes）
オート・ムロット（Hautes Mourottes）
ムトット（Les Moutottes）
ポーラン（Les Paulands）
ペリエール（Les Perrieres）
プジェ（Les Pougets）
レナルド（Les Renardes）
ロニェ（Le Rognet et Corton）
ヴェルジェンヌ（Les Vergennes）

コルトンを生産する主な生産者

ボノー・デュ・マルトレイ（Bonneau du Martray）
フェヴレ（Faiveley）
ダルデュイ（d'Ardhuy）
シャンドン・ド・ブリアイユ（Chandon de Briailles）
フォルラン・アルブレ（Follin Arbelet）
ルイ・ラトゥール（Louis Latour）
ブシャール・ペール・エ・フィス（Bouchard Pere et Fils）
ジョゼフ・ドルーアン（Joseph Drouhin）
トロ・ボー（Tollot Beaut）
ルイ・ジャド（Louis Jadot）
ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ（DRC）