モンテプルチアーノ・ダブルッツォ Montepulciano d'Abruzzo

モンテプルチアーノ・ダブルッツォは、中部イタリア・アブルッツォ州で造られる、果実味豊かなフルボディ系赤ワインです。 日本では、神の雫で「イタリアのモン・ペラ」と紹介され、一躍有名になった「カサーレ・ヴェッキョ」が、このモンテプルチアーノ・ダブルッツォのワインなんです。

生産地域は州全土とかなり広範囲で、年間なんと1億本以上生産されています。 しかしこれだけ広大なエリアで、大量に生産されているワインなため、地域によってかなり品質の差があるのも事実です。

しかし2003年、テラモ県の丘陵地帯と高原に広がる「コッリーネ・テラマーネ」地域が、特に品質の高いモンテプルチアーノ・ダブルッツォを造るとしてDOCGに昇格を果たし、購入する側もぐっと分かりやすくなりました。

ブドウはモンテプルチアーノ種90％以上で造られ、補助品種としてサンジョヴェーゼが10％まで認められています。

また、モンテプルチアーノ種で造られるロゼワインに「DOCチェラスオーロ・ダブルッツォ」があります。こちらは可愛らしいチェリーのアロマと、ややスパイシーな味わいを持つワインで、地元の唐辛子をきかせたスパイシーな料理に大変よく合います。

ちなみに・・・この「チェラスオーロ」とは、「チェリーの花」つまり「桜色」という意味で『ロゼワイン』を示す言葉なのですが、同名でシチリア島のワイン「DOCGチェラスオーロ・ディ・ヴィットーリア」は、「ケラスケス」という赤い実のなる木に由来している言葉で、こちらは『赤ワイン』を指します。

さらにさらに！！もう一つ間違えやすい用語として挙げられるのが「モンテプルチアーノ」です。 モンテプルチアーノ・ダブルッツォの「モンテプルチアーノ」はご存知の通り『ブドウの名前』ですが、トスカーナ州のワイン「ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ」の「モンテプルチアーノ」は、なんと『地名』です。そして使用されているブドウは「サンジョヴェーゼ」なんです。 紛らわしいですね・・・。

地域ごとのモンテプルチアーノ・ダブルッツォの特徴

前述したとおり、モンテプルチアーノ・ダブルッツォの生産地域は広大なため、地域ごとに特徴が異なります。ここでは４県のそれぞれの特徴をご紹介します。

まずは北部に位置するテラモ県です。DOCGのモンテプルチアーノ・ダブルッツォ・コッリーネ・テラマーネが造られている県で、トロント渓谷とヴィブラータ渓谷の間、傾斜の多い丘陵地帯でワインが造られています。凝縮感があり濃厚で、タンニンを多く含むため、長期熟成向きのワインになります。ちなみにこの「コッリーネ」とは「丘」を意味するイタリア語です。

州の中部に位置するペルカーラ県は、ロレート・アプルティーノと呼ばれる美しい丘陵地帯で生産され、調和のとれた優美なモンテプルチアーノが造られます。

南東部に位置するキエーティ県では、もともと大量生産で有名だった地域ですが、マイエッラ山塊近くの産地は昼夜の温度差が激しいため、凝縮感のある雄大なワインができるとされています。

西部の広大な面積を誇るラクイラ県は、フレッシュな味わいが特徴のチェラスオーロの産地として有名でしたが、近年は厳格なモンテプルチアーノができるとして注目が集まる産地です。

紛らわしい「モンテプルチアーノ」

中部イタリアのアドリア海沿岸（アブルッツォ州、マルケ州、モリーゼ州、プーリア州）で栽培される黒ブドウです。原産はアブルッツォ州のペスカーラ周辺ではないかと言われています。ワインになると濃いルビー色でしっかりとした果実の味わいがあり、一般的にはタンニンはまろやかです。色も味も「濃い」ワインになるのが特徴です。

イタリア全体の品種別栽培面積では、サンジョヴェーゼに次いで2番めに多い黒ブドウ品種でもあります。

長い間サンジョヴェーゼ種と混同されてきた品種で、1500年代半ばローマ法王パオロ3世が法王のボトル（Bottiglia di Papa）なるワインをトスカーナ州モンテプルチアーノ村で造らせていましたが、ラベルに村名の「モンテプルチアーノ」と表記したため、混乱を招いたと言われています。 1875年の文献から、モンテプルチアーノ種とサンジョヴェーゼ種を区別して書かれた記述が発見されたため、恐らくこのあたりからちゃんと区別するようになったと思われます。

つまり当のイタリア人だってずっと混同していた「モンテプルチアーノ問題」。私たち日本人が混乱するのも仕方ないことなので安心してください！

モンテプルチアーノ・ダブルッツォの主な生産者